頂いたコメントへの返信を兼ねて、タイトルの内容を少し説明させて頂こうと思います。
前置き
心理カウンセリングは、いったい何をしてくれるのでしょうか?
私が心理カウンセリングを学び始めた頃は、心理カウンセリングは、世間では、まだまだ一般的なものではありませんでした。
今も、まだ一般的なものとして受け入れられているとは言えません。
ただ、「心理的な問題がある」と思われる状態に陥った人が「心理カウンセリングを受ける」というと、 その解決への道を歩み出した印象を与える位には、社会に浸透してきているようには感じます。
しかし、「心理カウンセリングは心の問題を解決するらしいから、きっと、心理カウンセリングを受ければ、あの人の問題も解決するのだろう・・・。」そんな感じで、 まだ、どこか人ごとのような感じのような気がします。
日常の生活の中で 、自分の為に心理カウンセリングを活用しようと思うことは、ほとんどないのではないでしょうか。
これは、日本社会の中では、心理カウンセリングは「心の問題」を解決するためのものという印象が、まだまだ強いのだろうと思います。
実際に、カウンセリングにお越し下さる方のお話を伺っていても、ご自身の心の中に「得体の知れないもの」が潜んでいて、それを掘り起こすことが解決につながると考えている方が多いと感じています。
しかし、心の苦しさは、心に得体の知れないものではなく、 ほんの些細なことによって引き起こされているのです。
そのことを、ちょっとした例え話で説明します。
悩みを例え話で説明すると
灼熱の砂漠のど真ん中に、 あなたがいるところを想像してみて下さい。
360度見回しても、ただ、地平線が見えるだけです。
あなたの手には、コップ1杯の水があります。
この水で、何日生き延びられるのか分かりませんが、大切に飲まなければならないのは確かなことです。
そんな状態で、あなたは、VR(バーチャルリアリティ)のゴーグルを装着されます。
そのVRゴーグルは、一番はじめに使用した場所の風景を再現する性質があります。
砂漠のど真ん中では、VRゴーグルを装着しても、VRゴーグルを外して直接目で見ても、同じ風景が見えます。
コップ1杯の水を、直接見ても、VRゴーグルを通して見ても、きっと「コップ1杯しか水がない」と感じることでしょう。
VRゴーグルを装着したまま過ごしているうちに、あなたは、 VRゴーグルを掛けていることを忘れてしまいます。
次に、この砂漠の風景を記憶したVRゴーグルを掛けたまま、あなたは、きれいな水が湧き出る泉のほとりへと瞬間移動します。
手に持っているコップ1杯の水を見て、どう思うでしょう?
VRゴーグルを通して見ているあなたは、恐らく、 「コップ1杯しか水がない」と思うでしょう。
なぜなら、VRゴーグルには、はじめに見た「砂漠」が風景として映し出されているからです。
しかし、周りの人たちは、コップの水をガブガブと飲んだり、中には、余った水を捨てたりしています。
周りの人たちは、自分たちが泉のほとりにいることが分かっていますから、そのような行動をしても不思議ではありません。
しかし、 風景として、泉ではなく砂漠を見ている あなたは、大切な大切な水を粗末にする周りの人たちのことを理解することができません。
理解しようとしても理解できないので、やがて、「どうして水を大切にしないんだ!」と怒りさえ覚えるようになります。
この「水を大切にする」ということへのこだわりによって、 「水を大切にしない」という問題を浮き上がらせてしまいます。
やがて、あなたは、人間関係が煩わしいと感じるようになってしまいます。
逆に、泉から湧き出る水を汲みながら飲む人たちも、あなたが「どうして水を大切にしないんだ!」 と不快感を伝えてくる理由を理解できません。
なぜなら、彼らには、あなたが見ている砂漠が見えないからです。
やがて、彼らも、水をガブガブと飲むことを妨げようとするあなたを煙たく感じるようになります。
このようにして、お互いの想いの中に、お互いが親密になることを妨げる力を生じさせてしまいます。
これが、悩み込んでしまっている時の状態です。(詳しいことは省略しますが、自分のことで悩んでいると思っていても、結局は、人間関係のことで悩んでいます。)
心理カウンセリングとは
例え話のような状況に陥ったとき、どのようにすれば、そこから抜け出すことができるでしょうか?
まず、VRゴーグルを外すことです。
その為には、VRゴーグルを装着していることに気づかなければなりません。
しかし、VRゴーグルを外すだけでは解決しません。
なぜなら、コップの水を少しずつ飲むことに慣れきってしまっているからです。
VRゴーグルを外しても、あなたは、きっと、水をガブガブ飲むことに抵抗を感じ、水は少しずつ飲むことでしょう。
あなたは、本当は、水をどのように飲みたいのですか?
今まで気づかないようにしていた「ガブガブ飲みたい」という気持ちに気づかなければ、あなたはこれからも水をガブガブ飲むことはないでしょう。
「ガブガブ飲みたい」という気持ちに気づいて初めて、ガブガブ飲むという行動を起こす可能性が生じるのです。
しかし、これでも足りません。
その理由は、砂漠のど真ん中で、水をガブガブと飲んでしまっては取り返しのつかないことになるという感覚が身についてしまっているから、ガブガブ飲むことに大きな不安を感じてしまうのです。
これが頭では分かっているけれども、思った通りにはできないという状態です。
そこで、水を飲むことに慣れる必要があります。
やがて、水をガブガブ飲みたいときには、ガブガブと飲めるようになっていきます。
カウンセラーとは、
- VRゴーグルによって見える世界を理解しようとしてくれる人
- VRゴーグルを外したときに見える世界を知らせてくれる人
- VRゴーグルの存在を気づかせてくれる人
- VRゴーグルを外して、コップ一杯の水をガブガブ飲み干す練習するあなたに付き合ってくれる人
ということができます。
- VRゴーグルをしていることに気づくのはあなた
- VRゴーグルを外した世界を知ろうとするのはあなた
- VRゴーグルをはずそうとするのはあなた
- VRゴーグルを外して水をガブガブ飲む練習をしようとするのはあなた
これがカウンセリングの主体は、カウンセリングを受ける人にあると言われる理由です。
カウンセラーは、このようなことのお手伝いの専門家なのです。
今回の投稿が、悩みを解決する道筋をイメージしたり、カウンセリングを活用しようとしたりするきっかけになれば幸いです。
【補足】
例えば、人前で話すのが苦手なら、場数をこなせば、人前で話すことになれて、問題は解決すると考えるかもしれません。
人前で話すことにコンプレックスのようなものを感じていない場合は、そのような対処が解決につながるでしょう。
しかし、 人前で話すことに コンプレックスを感じていたり、恐怖症的な状態に陥っている場合、慣れることが解決ではないことが多いです。
人前で話して失敗したときに、そこで負った心の傷を癒やす方法を知り、それを実践することに慣れることです。