心理カウンセリングというと、カウンセラーに、自分のつらかった過去の話をしなければならないと思っている人が多いように思います。
これは、「心の苦しみは、過去の嫌な体験が原因となっている」という思い込みから、そのように考えてしまうのだと思います。
まずいことに、トラウマという言葉は、まさに、そのことを確証する言葉のように、現代社会においての地位を確立してしまっているところがあります。
しかし、心の苦しさを解決しようとするときに、考えるべきことは、「なぜ、過去のそれらの体験を、トラウマにしてしまったのか?」ということです。
ここを解決しなければ、これから先に体験する色々なつらい出来事を、全てトラウマとしてしまう恐れがあるのです。
では、何が、つらい経験をトラウマに変えてしまうのでしょう?
それは、
- 自分のつらい気持ちを、人に話さずに、自分一人で我慢してしまう
- その場面を、自分の思考と判断だけで解決しようとする (自分だけが、責任を取ろうとする。相手だけに責任を取らせようとする)
などといった行動習慣なのです。
これは、過去において身についてしまった習慣です。
子供の頃の家庭での親とのやり取りの中で、次のような状況が多かったことが推測されます。
- 自分のつらい気持ちになっても、それを親に聴いてもらえなかったので、自分一人で我慢しなければならないことが多かった
- 気持ちを伝えても自分だけのせいにされることが多く、心の苦しさを解決する方法を自分一人で考え行動するしか仕方なかった
- 気持ちを聴いてもらえず気持ちを楽にすることが出来なかったので、それ以外のところで、心の苦しさを解決する方法を自分一人で考え行動するしか仕方なかった
『心の苦しさ』の正体は、そんなところから来る『一人ぼっちで生きていかなければならないような感覚』と表現することもできると思います。
しかし、この世の中には、つらいあなたを『一人ぼっち』にする人も確かにいるかもしれませんが、それ以上に、一人ぼっちにせずに、寄り添ってくれる人もたくさんいるのです。
そんな、「寄り添ってくれる人がいる」という現実と、「寄り添ってもらえなかった」という過去の橋渡しをお手伝いしようとするのが、心理カウンセリングの目的だと考えています。
ですから、「カウンセリング中に感じたその時その時の気持ちを話せるようになること」が橋渡しの目標であり、それが、何でもトラウマにしてしまう根本原因から開放されることにつながるのだと考えています。
カウンセラーが言った言葉でつらい思いをしたら、ちゃんとつらそうにすれば良いと思います。
「つらくなった」と言って泣いても良いと思います。
カウンセラーは、きっと、「つらい思いをさせてゴメンね」と謝ってくれるはずです。
そして、きっと、あなたは、そんなカウンセラーの反応が、これまであなたの身近な人からのがあなたが受けてきた反応と違うことに、戸惑うと思います。
そんな戸惑いを繰り返し体験していくと、やがて、カウンセラーからそんな反応が返ってきても戸惑わなくなると思います。
それは、カウンセリングを卒業するときだろうと思います。
そんな中で、過去のつらい話を話したくなることもあると思います。
そんなときは、話せば良いのです。 何を話さないといけないということはありません。
その時々に話したいことを話せば良いのです。
そして、その時々の気持ちも、話しても良いことなのです。